財布の中を見てみると、たまたまぴったりその金額のお金が入っていた。
小銭がじゃらじゃらになるわけじゃないし、お釣りのないように渡した方が迷惑じゃないよね。
お金を取り出し、惣介さんに渡す。
「ごめんなさい。そのままで」
「いえ、大丈夫ですよ。本当はそんなに高いものでもないですしお金はいらないと言いたいところなんですけど、それだと琴音さんは気を使ってしまうでしょう?なので、“今は”ありがたくいただいておきます」
「!」
わざとらしく“今は”を強調されたような気がして、私はドキッとしてしまう。
こういうところ、ズルいんだよなぁ、惣介さんって。
でも、嬉しいと思ってしまう私がいる。
……いつかはお金を出す出さないなんてことは私たちの間には関係なくなって、一緒のものを使う日が来るんだなって。
そう気付くとドキドキがどんどん大きくなっていく。
「あ、ちなみに俺が使ってるシャンプーも入ってます。これもまた結構オススメです」
「ちょっといいですか?」とガサガサと袋の中を探って惣介さんが出したのは、あるシャンプーの試供品。
……この商品はテレビCMでよく流れていて、日用品売り場でもよく見かけるパッケージのデザインだ。
“スノー”と“ローズ”の2種類の香りがあって、単独で香りを楽しむもよし、それぞれを恋人同士で使って混じり合う香りも楽しむもよし、というようなキャッチコピーで売り出しているもの。
何でこんなに詳しいかというと。