紙に書かれた文字をじっと見ていると、惣介さんが苦笑いを浮かべた。
「あまりジロジロ見ないでください……。汚い字なのはご愛嬌ってことで大目に見てもらえると嬉しいです。曖昧な記憶で書いた上、定規も手元になかったのでフリーハンドでぐちゃぐちゃになっちゃいました……」
「あっ!そういう意味で見てたわけじゃ……ってことは、これ、惣介さんお手製の領収書なんですか!?」
「……お恥ずかしながら。暇人だと笑ってもらって構いませんよ?」
「いえっ、嬉しいです!わざわざ作ってくれたなんて!ありがとうございます」
そんな手の込んだことをしてくれるなんて、やっぱり惣介さんってお茶目だ。
実は気になっていたネクタイだって、ぷっくりほっぺの猫がワンポイントでついていて、すごくかわいいし。
「……そんなに喜んでもらえるなら、もっと派手にすれば良かったですね。絵を描いてみたり?」
「えっ?」
「え?それじゃ物足りませんか?じゃあ……俺のサインも、おまけでさらさらっと付けておきますから」
「……ふふっ。それもいいですけど、これで十分です!」
「それは良かったです」
「あ、でも、いつかは惣介さんの描いた絵、見てみたいです。何か絵心ありそう!」
「……それって、悪い方の絵心ですよね?」
「……悪いなんて……面白い方の絵心ですよ?」
「やっぱり……」と頭をかくんとうなだれるように下げてしまう惣介さんを横目に、くすくすと笑いながら私はバッグの中から財布を取り出す。