「……もし寂しくなったら、いつでも言ってください」

「……え?」

「いつだって、俺の腕の中に琴音さんを包み込む用意はできてますから」

「!」

「……なんて。キザ過ぎましたかね?」


くすくすと笑いながら何事もないように惣介さんは立ち上がったけど、その顔は赤く染まっている気がして。

……夕陽のせい?


「さ。そろそろ帰りましょうか。楽しい1日だったからちょっと後ろ髪ひかれますけど」

「……そう、ですね」


惣介さんの言葉に立ち上がった私の目に写ったのは、いつも通りの笑顔を浮かべた惣介さんだった。

その顔は赤く染まってはいなかった。

真実はわからないけど、私の中で変化していくものは明らかで。

ドキドキと高鳴る鼓動。

惣介さんに対して感じるほんわかとした温かい気持ち。

もっと長く一緒にいたいという気持ち。

お見合いをした日には全く想像もしてなかった。

……まさか、こんな気持ちになる日が来るなんて。



……その日、もう一生することはないと諦めていた“恋”が始まっていく予感がした。