「あ、荷物それだけですか?置きますよ」

「……す、すみません」

「いえいえ」


これくらいのこと何でもありませんよ、と言うように、惣介さんは自然と私の荷物をひょいと持ち上げ、後部座席に置いてくれる。

……私、子供みたいだ、と思ってしまって、ちょっとだけ自己嫌悪。

この年で車に乗り慣れてないのも、たぶんおかしいんだと思うし。

ペーパーだけど、免許は一応持ってるんだけどな。

早速、出鼻をくじかれてしまった気がした。

特に何をしたわけでもないのに。


「どうぞどうぞ。ちゃんとクッションは琴音さん仕様にしておきましたから、安心して座ってください」

「!わ、私仕様、ですか?」


助手席に置かれているのはクリーム色の生地に緑と黄緑の蔦や葉、赤い花、そして青い鳥が書かれたシンプルだけどかわいいクッション。

……正直、私の好みにピッタリだ。


「ま、それは大袈裟ですけど。ほら、座ってください。その体勢、辛いでしょう?」

「あ、はい」


私はそっと助手席に乗り込み、ぱたんと助手席のドアを閉める。


「今までのは何年も使ってたクッションでくたくたになってたので、これを機に変えてしまおうって思ったってのもありますけどね。でも、琴音さんがどんなデザインのものが好きかわからなかったので、俺の独断と偏見で選びました。琴音さんっぽいかなと。もし琴音さんが気に入ってくれるなら他の誰にも座らせませんから、言ってくださいね?」

「!!」


突然飛んできた惣介さんの言葉と愉しげな笑顔に戸惑ってしまう。

……私のためだけのクッションってこと?

何かそれって……