真っ赤な軽自動車……いや、違うだろう。

タクシー……うん、違う。

シルバーのBMW……まさか……、あ、違った。

濃いシルバーグレーの普通車……あ。

その車からひらひらと手を振る人物は惣介さんだ。

私は慌てて車に駆け寄る。

車のそばに行く頃には、助手席の窓が開いていた。

私はひょこっと中を覗く。

するとそこには惣介さんの笑顔があった。


「琴音さん、おはようございます」

「あっ、おはようございます!」

「早速ですけど、乗ってください」

「あ、はいっ」


かちゃりと少し開いた助手席のドアに、私は手を掛けてゆっくりと開ける。

……そ、そうか……。

助手席、だよね。

二人なんだし……。

どこまでも考えの浅い私は助手席に乗るということも頭になくて、少しどきっとしてしまう。


「し、失礼します」

「どうぞ?あ、荷物は後ろに置いて構いませんから」

「あっ、ありがとうございます。え、えっと」


助手席に片足を入れてしまった私は、荷物を片手に、外に下りて後部座席に荷物を置くべきかどうするべきかあわあわとしてしまう。

実家に車がないこともあって、車にあまり乗り慣れていないのもあるし、ちょっとしたことがよくわからない。