「惣介さんって運転すると人が変わりそうなイメージです」

『……琴音さんって、俺に変な偏見持ってません?』

「え、そんなこと…………ないんじゃないですか?」

『……その間がいろいろ物語ってますよ……』

「ふふっ。で、実際はどうなんですか?」

『普通だと思いますよ?スピード狂でもないし、ちゃんと安全運転します。ほら、琴音さんを乗せますし、絶対に事故なんて起こせませんから』

「!」


惣介さんの優しさ……っていうか、大事にされてるのかも、って感じてしまう言葉に、どきんと心臓が跳ねる。

何となくそれを悟られないように、私は口を開く。


「……そ、それは良かったです。私絶叫系苦手ですし」

『絶叫系ダメなんですか?じゃあ……、3回目のデートは遊園地ですね。あ、ほら、柚華遊園地に後ろ向きジェットコースターありましたよね?あれ、乗りましょう』

「!」


惣介さんの言葉の語尾に“♪”がついていることに気付いて、楽しがられてる!と私は慌てて却下の言葉を出す。


「それは私が楽しくないので、絶対に却下です!!」

『えー俺は楽しいのに。琴音さんも意外とハマるかもしれませんよ?人生、何事も挑戦ですって』

「……私のよれよれの姿を見て惣介さんが爆笑してる姿が鮮やかに目に浮かぶので、やっぱり却下です。そんなずるいことさせません」

『そんなことないのに……もしもの時はちゃんと介抱しますよ?』

「!……やっぱり意地悪ですよね。惣介さんって」

『そうですか?放置しないだけ優しいと思うんですけど……あ、でも、最近のちょっとした楽しみですね。琴音さんをからかうの。』

「!」


くすくすと電話の向こうで惣介さんが笑っているのが聞こえてきて、その声は私の耳をくすぐる。

それが何だかくすぐったく感じて、耳が熱くなってしまうのを感じる。