「今日は本当に楽しかったです」
「私も楽しかったです」
「1回目のデートは成功、ですね」
「ですね。ふふっ」
ふと私と惣介さんとの間に、少し冷えた風が通りすぎる。
「……じゃあ、気をつけて」
「はい」
「……また、楽しいことしましょう」
「……はい」
ほんの少しだけど、“寂しい”という気持ちが私の中に生まれる。
……惣介さんはどうなんだろう?と、その顔を見上げると、視線がばちっとぶつかった。
惣介さんは何事もないように口元に笑みを浮かべたから、その心はわからなかった。
その後はさっきのやりとりがどこかに行ってしまったかのように、あっさりとお別れをした。
でも、私が改札を通って見えなくなるまで、惣介さんは私を見送ってくれた。
やっぱり“気遣い名人”だな、と私はホームで電車を待っている時に惣介さんの笑顔を思い出しながら、ほくほくとした気持ちで一人小さく笑った。