「……じゃあ、気をつけて帰ってくださいね」

「はい」

「……いや、やっぱり送ります」

「……いりませんってば。電車で二駅行って、駅から歩いて1分で着いちゃうんですから」


そう。私と惣介さんは目と鼻の先の近さに住んでいたのだ。

しかも、時間帯が違うとは言え、私も惣介さんもこの柚ヶ丘駅を使っていて(私はいつもは通り過ぎるだけなんだけど)。

ついさっきそのことを知ったらしい惣介さんはすごく驚いていて、私は笑ってしまったんだけど。


「でも。だいぶ日も落ちてますし」

「大丈夫ですって!」

「……じゃあ、本当に気をつけて帰ってくださいね」


……このやり取りをしたのは、これで3回目。

惣介さんの「送ります」という言葉に、お断りを入れる私。

私の断りの言葉に、「でも」や「いや」をつけて送りたがる惣介さん。

……これって世間で言う“バカップル症状”だと思うんだけど。

それもこれも、心配症の惣介さんのせいだ。

“心配性名人”も称号に加えておこう。


「……わかりました。家に着いたら、ちゃんと連絡しますから。惣介さんは自分のおうちで待っていてください。ね?」

「……琴音さんは強情ですね」

「……その言葉、そっくりそのまま惣介さんにお返しします」


ぶぅ、と少し拗ねていた表情を見せていた惣介さんは少し驚いたように目を大きく開け、その後笑顔が浮かんだ。

もちろん、私もくすっと笑ってしまう。