惣介さんの手がなだめるように、私の頭を撫でてくれる。
すごく寒かったのに、惣介さんに抱き締められているというだけで、温かくて。
……それと共に沸き上がる、惣介さんのことが好き、という気持ち。
あんなに膨れ上がっていたはずなのに、会ってしまえば、さらにまだ大きく膨らむ。
私の中の惣介さんへの気持ちを示すバロメーターは無制限みたいだ。
ぽん、ぽん、と一定のゆったりとしたリズムで撫でられているうちに、心が落ち着いて、溢れ出した涙と引き換えに、いろんなもどかしい気持ちはどこかに行ってしまった。
……それもこれも、惣介さんに触れているから。
惣介さんは私の精神安定剤なんだ……。
「…………琴音さん」
「……っ!」
「大丈夫ですか?」
「……」
私は惣介さんの胸に顔を埋めたまま、小さく頷く。
……言うだけ言ってしまって冷静になった私は、惣介さんにぶつけた言葉を思い返す。
好きだとわめき散らして。
離れたくないとわめき散らして。
何で他の人を見るんだと問い詰めて。
まるで、子供みたいな駄々ばかり。
いい大人なのに、自分の思い通りにいかないからと駄々をこねるなんて……は、恥ずかしすぎる……っ!
「……琴音さん」
「…………ご、ごめんなさい……っ」
「……いえ」
たぶん怒ってる声ではないと思うけど、絶対に呆れられてる。
私はゆっくりと惣介さんの胸を押して離れる。
惣介さんはするりとすぐに私の身体を解放した。
でも、顔が上げられない。
こんなぐちゃぐちゃな顔なんて、見られたくない。
絶対に、見せられない。