「……本当に惣介さん、なんですよね?」
「そうですよ。琴音さんのことが大好きな。」
「っ!」
周りには人がたくさんいるというのに、惣介さんは堂々とそんなことを言う。
いつもなら人前では言わないようなことを。
慣れていない私の顔が赤く染まるのはあっという間。
そして。
つい、だった。
無意識、だった。
……周りの目線が気になってしまって……惣介さんが別人のように感じてしまって、その手を小さく振り払ってしまったのは。
「!」
「あっ、ご、ごめんなさい……!でも……!」
「……いいえ、大丈夫ですよ。慣れてますから」
「……え?慣れてる……?」
「とりあえず行きましょう。ここは人目がありますから……ゆっくりお話ししましょう。ね?」
「……はい」
惣介さんに悲しそうな表情が小さく浮かんだ気がしたけど……
私はその事実を受け入れることだけで精一杯だった。
そして。一度離してしまった手は、繋がることはなかった。