「……知りたいですか?」
「っ!あ、あの……」
「……今なら、お得な10倍サービス中ですけど」
「!そ、それは大変お得、ですね……」
「……どうしますか?」
ゆっくりと惣介さんの手が私の身体を離す。でもその距離は今までになく近くて……
コツンとおでこ同士がぶつかる。
一緒にメガネが私の顔にぶつかってしまいそうだ。
……惣介さんの熱を感じる。
それは私と同じくらい熱いもの。
おでこだけじゃなくて、もっとその熱を感じたい。
そのためにはどうしたらいい?
この状況、この距離、そして惣介さんの言葉。
……答えはひとつだ。
「えっと……」
「10倍じゃ足りませんか?」
「!い、いえ……今日のところは十分過ぎます」
「……今後、増やすことも検討しておきます」
何の話をしているのかわからなくなってきたけど。
とにかく、今は……求めるだけ。
「……じゃあ」
「はい」
「……10倍で、お願いします」
「……はい。オマケもつけますから」
惣介さんは私の言葉に嬉しそうな笑みを浮かべてくれる。
私もつられて口元が緩む。
こんなに近くにいて恥ずかしいはずなのに、惣介さんが相手だとその恥ずかしさも心地よくて。
ぽかぽかと温かい。
……ずっと触れていたい、できることなら、もっと触れたい。熱を感じたい。
……その気持ちが、二人重なった感覚がして。
……すごく自然に。
お互いに引力を感じて、引き合うように。
私と惣介さんの唇同士が、触れた。