「琴音さんって…………」

「……?」

「……俺のこと、好きじゃないんですか?」

「……。はいっ!?」

「……惚れてない、って言いましたよね?」


惚れてない、なんて言ったっけ?と頭の中で考えを巡らす。

惚れ……


「…………あぁ!“惚れそう”、って言ったことですか!」

「……それは暗に、“今は惚れてない”、ってことでしょう?」

「え?」

「すごくショックです……」


惣介さんは本当に悲しそうな表情を浮かべて、目線を下げてしまう。

その姿がかわいくて愛しくて嬉しくて、つい顔がにやけてしまった。


「……ぷっ」

「!」


“もっと惚れそう”ってことだったのに、惣介さんには違う風に聞こえちゃったんだ……。

私が吹き出したのを見て、惣介さんがムッとした表情を浮かべた。


「何で笑うんですか。ショックを受けてるんですよ!?まさか、まさか……!」


それ以上言葉を続けられないようで、惣介さんは頭を抱えてしまった。

いつもは私よりも高い位置にある惣介さんの頭が、私の目線の下にきて、その頭を撫で回したい衝動に駆られる。

……そんなことする勇気はないけど。

でも、これ以上誤解させておくと良くない気がすると思った私は口を開いた。