「…………。」

「……琴音さん?」


私の目に写るのは、それはとてもとても綺麗に片付いた部屋だった。

部屋自体は外見の西洋風さはなくて、いたってシンプル。

無駄なものは置いてない感じでスッキリとしていて、置かれたソファやラック、本棚もシンプルだけど、黒と白で揃えられた家具ということもあってシックでどこかオシャレだ。

……ふわふわとした惣介さんのイメージから考えると、ちょっと大人っぽい気がした。


「琴音さーん?」

「っ!あっ、すみません!」

「やっぱり散らかってますかねー。外に出っぱなしになっていたものは、頑張って閉じ込めたつもりだったんですけど……って、あれ……、雑誌出てますね……すみません」

「や、違います!すごく綺麗でビックリしてました!絶対、私の部屋の方が散らかってます」

「そうなんですか?」

「はい。何年も同じ場所に住んでるのもあって、なかなか捨てる機会もなくて、ものが溢れかえってますもん」

「へぇ。じゃあ今度、どんなものか確かめに行かなきゃですね」


惣介さんは雑誌を本棚に立てながら、にやりと笑う。


「えっ!?だっ、ダメです!」

「えー行きます。押し掛けてでも」

「ダメですってば!」

「聞こえませーん。もう今日は琴音さんの“ダメ”は品切れですよ?たくさん使ったでしょう?」

「!ずっ、ズルいです!」

「それはお互い様です」

「!」


惣介さんがくくくっと笑いながら私の頭をぽんっと軽く叩いて、キッチンの中に入っていく。

惣介さんの触れたところに私は手を当てて、嬉しさを噛み締めた。

想いが通じる前はこんな風に触れることもなかったから、惣介さんに触れてもらえることも、触れることができることも、幸せを感じて。

触れることができることはこんなに安心できるものなんだな、ってあらためて思った。