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……どうしよう。
私はある土曜日の昼前、柚ヶ丘駅の中にあるケーキ屋さんでショーウィンドウを眺めていた。
そもそも、惣介さんって甘いもの好きだっけ?
今までのデートの時はデザートってあまり食べなかったし……食べてる記憶がない。
生クリームは大丈夫かな?
それともモンブランとか?
タルトもいいかも……
うぅん、無難にプリンとか?
お饅頭とかの方がいい?
……どうしよう。
そんな調子でうろうろとケーキ屋さんの前を歩いていると。
「お悩みですか?」
「あ、はい……って、え!?」
「悩んでる時には相談してください、って言ったでしょう?」
「惣介さん……!何で……っ」
振り向いたところにいたのは、くすくすと笑う惣介さん。
「待ち合わせ場所に琴音さんがいなかったから、心配になって構内をうろついてたらここにたどり着いたんですよ。食い入るようにウィンドウを覗き込む琴音さんがかわいくて、3分くらい眺めてましたけど」
「!すっ、すぐに声掛けてくれれば良かったのに!恥ずかしすぎます……!」
「いや、俺のために悩んでくれてるのかなって思ったら嬉しくて、つい」
「!!!」
その言葉通り、嬉しそうに表情を緩ませて笑う惣介さんに、私の顔も緩んでしまった。
「って、あ。……すみません。邪魔、ですよね」
「へ?」
惣介さんが急に私から目線を反らし、申し訳なさそうな顔をして謝った。