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「……さ、寒いんですけど……!」

「同意します……!だ、暖房つけましょう!」


おそらく私のせいで何十分も外に居たから、身体がすっかり冷えてしまっていた。

惣介さんは車のエンジンを掛けて空調を調節し、暖房をつけてくれる。

でも、温まるまではまだもう少し時間がかかりそうだ。

その時、私をあることが襲った。


「はっくしょん!……あっ、すみません!」


とっさに口を押さえたけど、思いっきりくしゃみしたのは変わらない。

慌ててハンカチを取り出して鼻の辺りをすすっと触ってみたけど……よし、鼻水は出てない!


「あぁもう!だから温かくしてくださいって言ったでしょう!?風邪を引かれたら困るんですから!」

「むっ!……ちょ、く、苦しいです……っ!」

「自業自得ですよ!」


惣介さんは思いっきり私がしていたマフラーをぎゅうぎゅうと締める。

……もちろん、首が絞まらない程度に、だ。

マフラーが完全に私の首元に収まったのを見て安心したらしい惣介さんは、うん、と満足そうに頷く。

それで惣介さんの手が離れていくと思ったのに。


「!!!」


その手はふわっと私の両頬を包み込んだ。

え?えっ!?

突然のことに、私は何も反応できずに、されるがままだ。


「頬もこんなに冷えて!」

「む、むっ!」

「耳も!冷えて真っ赤ですよ!」

「ぅひっ!?」


惣介さんにぺたぺたと顔を触られて冷えてしまった頬に熱が集まっていくのを感じる。

しかも耳を触られるとくすぐったくて変な感じがして、つい目をぎゅっと閉じてしまう。