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「琴音さん!こんにちは!」
「!!あ、こ、こんにちは……」
惣介さんの笑顔を見た瞬間、私の心臓がこれでもかってくらい飛び跳ねた。
惣介さんに会うのはすごく久し振りで。
“会わなければ気持ちなんてすぐになくなるはず”と思っていたから、今日会ってもドキドキするはずはなかったのに……
……何で?前よりもドキドキするし、胸がきゅっと締め付けられてすごく苦しい。
こんな気持ち、早く忘れなきゃいけないのに……。
私はハァと気持ちを落ち着かせるように息をつく。
「……琴音さん……?」
「え?」
「あ、いえ。何でもないです。行きましょうか」
惣介さんはいつものように車で迎えに来てくれた。
何か言葉を飲み込んだ気がしたけど……気付かなかったふりをしよう。
無駄にドキドキさせられても仕方ないから。
「お疲れですか?」
「あ、そう、ですね」
「大変ですね……あまり無理しないようにしてくださいね?って、大切な休日に呼び出したのは俺ですけど」
「あ、いえ。大丈夫ですから」
「……はい」
ドキドキと速くなる鼓動を必死に表に出さないように、普通に、焦らずに、と思って話すと、すごくそっけなくなってしまう。
これはこれで変だと思われるかもしれない。
でも……それでいいのかもしれない。
いっそのこと、変だと思われて……
嫌われた方が楽かもしれない。