私の身体はすっぽりと惣介さんの腕に包まれていて、目の前には惣介さんの胸。

……いつもより強く、その香りを感じる。

私のものと少し違う、その香りを。

叔母の言っていた“時間が経つに連れて、人によって香りは変わるものよ”という言葉を思い出した。

一緒に“抱きついてみればいいじゃない?”って言葉も一緒に。

かーっと耳や顔が熱くなっていくのを感じる。


「琴音さん、大丈夫ですか?」

「あっ、はっ、はい!ごめんなさいっ」

「……いいえ」


確実にいつもより近い位置から聞こえてくる惣介さんの声に、心臓のドキドキまで速くなっていくのを感じて、私は惣介さんから慌てて離れようとする。

でも、ぐっと惣介さんの腕に力がこもった気がして、それは叶わなかった。


「!!」

「……本当に目が離せませんね。琴音さんは」

「う……っ、すみません……」

「…………いえ」


その口調は呆れているようでもあり、怒っているようでもあり……でもすごく優しい気がして。

私は動けなくて惣介さんの表情を確認することはできない。

その胸に顔をうずめるだけ。

これ、一体どんな状況なんだろう……っ?