お見合いの日に惣介さんが「“俺”を見てくれる人はいなかった」という言葉を言っていたことが、ふと頭の中に浮かんだ。

あの日は私もいっぱいいっぱいで気付けなかったけど……惣介さんは何か心に抱えてるのかもしれない。

……私にそれを知る権利はある?


「……俺がそうなれるのかはわかりませんけど……、でも、俺は見てます。琴音さんのこと」

「!」

「琴音さんはどうですか?」

「っ!」

「琴音さんも……俺のことを見てくれてる、って思っていいですか?」


少し不安そうな表情を私に見せてくれる惣介さん。

……それは、惣介さんの本心が現れた表情、なんだよね?

だったら。


「…………思ってください。是非」

「ん、良かった」


惣介さんが嬉しそうに笑うから。

私もきゅうっと胸を甘く締め付けられるのを感じながら、一緒に笑うの。



……私が惣介さんの“大切な人”になれる権利があるかなんて、わからないし、自信もない。

でも。

私なりに惣介さんのことを見ているつもりだし……

私と居ることで、惣介さんの心もぽかぽかと温かくなればいいのに、ってそう強く思う。

ただ、それだけなんだ。