「琴音さんの色です。ずっと俺の中では、琴音さんは桜色なんです。でも、その中にもいろんな色が見えて……次はどんな色を見せてくれるんだろう、って俺はいつも楽しみなんです」

「……桜色?そんなかわいい色なんて……」


私には似合わない。


「……琴音さんはかわいいですよ?」

「!……そんな、私にはもったいない言葉と色です、よ」


惣介さんの感性って人とずれてるんじゃないかと思う。

だって、私はかわいいなんて思われるキャラじゃないし、年齢だって……もうピンクなんて似合わない。


「人間って、自分のことは見えない生き物なんでしょうね。……もしかしたら怖いから、見ようとしていないだけなのかもしれないですけど」

「……」

「それに……その人のことを本当に大切だと思っている人には、その人の本質を見ることができる権利があって。……人は自分を大切だと思ってくれる人や、大切だと思える人に出逢える瞬間を待ってるのかもしれない。……そんな風に考えることがあります」


そう呟くように言う惣介さんの表情は何となく寂しげで。

私に言ってるんじゃなくて、まるで自分にも言い聞かせているような。

……惣介さんにとっての“大切な人”。

その権利……って誰が持ってるんだろう?

そんなこと、私にわかるわけはないんだけど……。

それがわからない私には、惣介さんに近付きたいと思っても近付く権利はない……そういうことなのかもしれない、って少し思ってしまって悲しくなった。