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どくんどくんと、叔母にも聞こえているんじゃないかと思ってしまうくらいの鼓動に、私は落ち着かない。

どちらかと言えば人見知りする性格で、やっぱり初めて会う人にはどうしても緊張してしまう。

しかも、相手はもしかしたら結婚を考えることになるかもしれない人だ。

……その可能性がどのくらいあるのかは私にはわからないけど。


「あらっ。坂本さん。こんにちは」


突然、隣から響いた叔母の声に、私の身体がびくりと跳ねた。

……も、もしかして、来た、の?

私の身体は完全に固まってしまって、顔を上げることすらできない。

横で立ち上がる叔母の気配がして、私も立たなきゃと思うけど、その思考に反して身体は動いてくれない。


「あぁ、樋口さん。ご無沙汰しております」

「こちらこそ、ご無沙汰しております。今日はよろしくお願いしますね。……って、ほら、琴音も立ってご挨拶なさい」

「っ、あっ、はい……っ」


叔母に声を掛けられた私は、慌てて立ち上がろうとしてしまってガタタッと椅子を鳴らしてしまう。


「ご、ごめんなさいっ」

「……琴音さんは緊張してらっしゃるのかな?」

「!」

「そうみたいで。こういう席も初めてですし、良かったら大目にみてあげてくださいね?」


くすくすと笑い合う叔母と男性……坂本さんに、恥ずかしさに顔が熱くなるのを感じた。

最初から印象悪いよ……っ。

きっとこんなんじゃ、私がどうこう言う前に、相手の人から断られる。

……それはそれで、仕方のないことだし、縁がなかったってことだけど……。

もうどうにでもなれ!と、私は顔を上げた。


「……あっ!?」