小6の夏。







朝、学校に着いてからその日提出するはずの作文を家に忘れてきたことに気が付いた。








「ない…ないっ!!!」








「どうしたの?」








「今日提出の作文忘れたっ!!

どうしよ…」







その時、先生に素直に謝ればいいものを何を思ったのか





「ちょっと…取り行ってくる!!」






家まで取りに行った。










「えっ!あと10分しかないよ!?」






友達の声も聞かずに勢いよく教室を飛び出した。





家までは徒歩で30分はかかる程遠くて、走るのが得意じゃない私にはあと10分で取りに行くなんてどう考えても無謀だった。








「はぁっ…と…遠い……」








案の定、学校を出てわずか300m程でバテた。







自分の体力の無さにつくずく呆れた。









ついには暑さにも負けて日陰に座り込んだ。







「はぁ…」









せめてランドセルを置いてくれば良かったなんて後悔をしながら途方に暮れていると…










キキィーーーッ










自転車が急ブレーキで停まる音。









何事かと思って顔を上げると









「どうした?」








中学生の男の子が顔を覗かせてきた。









びっくして硬直していると、男の子は自転車から降りてもう一度訪ねてきた。










「具合悪い?」









心配そうな顔をする男の子。








「えっと…宿題忘れちゃって…」











言ってから恥ずかしくなって顔を俯けた。

具合が悪い方がまだ良かったな…。









「家まで取りに行くの?」













「あ…はい…。」











「乗せてくよ。」









「…え?」







「乗って。」










そう言うと男の子は自転車に乗って走ってきた方向とは逆に自転車を向けた。







「でも…」









「早く」










どうすればいいのかわからなくてとりあえず言われるがままに自転車の後ろにまたがった。










「家、どっち?」








「このまま真っ直ぐです…」









「よし、しっかりつかまっててね。」










そう言うと猛スピードで自転車を走らせた。







戸惑いつつ落ちそうなので男の子の肩に手をのせる。












周りにいるような男子とは全然違う大きい背中についドキドキしてしまう。








夏の朝日が眩しくて、風をきりながら走る自転車が爽やかで気持ち良かったのを今でもよく覚えてる。