「遅くなっちゃった…っ!」
普段の倍の速さで階段を駆け下りる。
外はもうオレンジ色に染まっている。
窓から見えるオレンジ色に染まったグラウンドは、真っ直ぐな青春そのものだ。
下駄箱で靴に履き替え、勢い良く玄関を出る。
「先輩っ…!」
校門には、オレンジに照らされた先輩がいた。
「遅いって。
寒かったよ。」
冗談ぽく文句を言う先輩。
その笑顔、大好き。
「待たせてごめんなさいっ。
じゃ、帰りましょう!」
先輩の手を取って歩き出す。
先輩の手はとてつもなく冷たくて、まるで氷みたい。
そう思っていると、急に手を離す先輩。
「ダメだよ、冷たいんだから。
ちょっと待ってて、温めるから!」
そう言って手を擦り合わせたり、息を吹きかけたり。
そういうとこ、先輩のくせに可愛いと思う。
だけどやっぱりこの時間でさえもどかしいから
「こうした方が温まります。」
先輩の手を握る。
「こうしてれば2人とも温かくなります。」
きっと2人の手も、心も。
オレンジの夕日がほのかに私達を照らす。
もうすぐ空は暗くなる。
だけどきっと明日も、先輩とオレンジ色の夕日の中で
手を繋げるよね。