「沙希ちゃん。。?」





拓に抱きしめられたまま高井さんと目があう




「拓。。?」







「。。。。」






「あっ、ごめん2人そういう関係なら言ってくれればいいのに。笑」







「。。違う」



「じゃあ。。。」









そのままドアは閉まった






高井さんの息は荒かった



もしかしたら急いで来てくれたのかも知れないのに。。






「違う。。。違うのに。。。」






拓の腕を放す




「沙希。。。」






拓の方を見ることができない






「ごめん。。」






拓はゆっくりとアタシを壁の方にもたれさせてそのまま部屋を出て行った






拓。。。なんで?





散らばった薬と栄養ドリンクをテーブルの上におく







自分の事しか考えないでアタシは拓を傷つけた


















『せんぱ~い大丈夫ですかぁ??』




『知佳ちゃんごめんね。。今日も休ませて欲しいって専務に伝えといて』




『分かりましたっ!お大事にして下さいね。薬ちゃんと飲んでくださいよぉ』




『うん。分かってる』









もう少し寝ていよ。。




熱のせいだけじゃない。





いろんな事を考えた






拓のこと、葵のこと、そして高井さんのこと








もう会社を休んで3日目。。





そんなこと初めてだった。。









拓の気持ちは嬉しいよ




でも。。。









【沙希?大丈夫??帰りに寄るからねっ☆】







・・・葵




このまま何も言わなければ誰も傷つくこともない




誰も傷つけたくない








でも一番傷つきたくないのは自分だった







「沙希〜」



買い物袋いっぱいの荷物を持って葵がドアを開ける





「熱まだあるの??」





「。。うん」




「バレンタインの報告待ってたのに〜」





「。。うん」







「まぁいいっかぁ」







テーブルの上に置かれたままのチョコに気づいて何も聞かなかったんだよね。









葵はそういう子だ。。






開いてもない薬にも袋に入ったままの栄養ドリンクにもきっと気づいてる







「さぁ〜何作ろうかな。笑



葵ちゃんの腕の見せ所だね」








葵の優しさが胸にささる




アタシは葵に気づかれないように枕を抱きかかえて泣いた









それさえも葵は気づいてたのかもしれないね








あったかいポトフとたくさんの優しさを置いて葵は帰った






心まで暖まる






アタシが葵に出来ること。。






それを考える






このまま拓の気持ちを伝えないのは優しさ?






親友として正しいこと?







考えれば考えるほど分からなくなる







何時間たっただろう。。







そのままソファで朝を迎えた









熱を測る



下がったぁ。。





今日は仕事に行かなきゃ






郵便ポストに溜まった新聞を取りにいく







【祐ちゃんの誤解はとけたから心配するなよ】





・・・拓






四葉のクローバー柄のポストカード。



似合わないって。



「もしもし沙希?」





「うん」





「拓ちゃんからメールあって。。。」





「。。うん」






「拓ちゃんアメリカ行っちゃった」








「。。。」






「海外研修だって。。」






「。。。そっか」










なんでいつもそうやって拓は1人かっこつけるの?






アタシ何もちゃんと言えてないのに。。




勝手にいなくならないでよ。







アタシは葵の大切な人を葵から離したんだ。









「おはよう」






「おはよう。あっ葵。。」





「なに?」







「話がある」





「。。。アタシも」






「じゃあお昼に」





「。。うん」







そういって葵は自分の部署に入っていった


















仕事なんて手につかない





「香川久しぶりに出てきてボーっとするな」




「すみません」




「最近お前らしくないぞ」




「。。。。。」





「頑張れよ」






「。。はい」







きっと仕事に対しての頑張れだったけど、アタシはいろんな事への頑張れだと勝手に思い込んだ







「沙希、お昼いける?」




「うん」



「今日は外にでない?」





「そうだね」







アタシ達は近くのカフェに入った








「アタシね。。」





「うん」





「拓ちゃんが沙希のことを好きって分かってたよ」






「。。。。」






「でもそれは沙希のせいじゃない」







「。。。」







「アタシが拓ちゃんに好きになってもらえなかっただけ」






「・・・葵?」






「アタシ、アメリカについていけばよかったかな。笑」







「。。。。」






葵は少し寂しそうに笑ってた







「でも拓ちゃん帰ってきたらまた頑張る!だから沙希も高井さんの事頑張ってよ」






「。。。でも」






「でもじゃない。頑張ろっ」







「。。うん」







葵はいつからそんなに強くなったの?





いつの間にか立場逆転してるよ。。







でも葵のおかげでアタシは救われた









「先輩っケータイ出してぇ。赤外線受信してくださいね。いきますよ」



開いた画像は高井さんだった。



知佳ちゃん。。




鬼だね。。







「それ待ち受けにしていいですよぉ。笑」




何も知らない知佳ちゃんは無邪気な笑顔でそういい残して自分の席に戻った





そう。。この笑顔の高井さんを好きになったんだ





高井さんの笑顔に見とれているとメールを受信した





画像を保存してメールを開く




【沙希ちゃん今日会える?】




。。高井さん





会いたい。。







【はい。大丈夫です】





【じゃあ20時頃迎えに行くから待ってて】










何から話せばいい?





アタシの気持ちを伝えたら迷惑?





午後からの仕事も手につかない







そしてこういう日に限って大切な会議が入る











何も頭に入ってこない




時計はもうすぐ19時





「じゃあ今日はここまで。お疲れさん」





「お疲れ様ですっ」





資料の片付けを同僚に頼みダッシュで駅に向かった











マンションの前に1台の車が停まっている



そこだけが回りの景色と浮いていてそれが高井さんだと分かる



スモークががった運転席。




アタシに気づいたのか少し窓が開き深く帽子を被った男の人がアタシの顔を見た





「おかえり沙希ちゃん」





この笑顔だけで頭の中が真っ白になる





「すみません。。待ちましたよね。。?」




「ううん。そんな事ないよ。笑」






アタシがおどおどしてると助手席のドアが開いた





「沙希ちゃん乗って」







「。。。はい」




アタシは急いで車に乗り込む



こんなとこ誰かに見られたら高井さんに迷惑がかかる








綺麗に片付けられた車内はほんのり甘い匂いがして緊張しているアタシをリラックスさせる






「じゃあ行くか」





そういうとゆっくりと車が走りだした






「沙希ちゃんお腹空いてる?」






「はいっ!」







「すごくおいしくて俺の行きつけの店があるんだけどそこでいい?」



「は、はい」








「今日は仕事お休みなんですか?」




「久しぶりのオフなんだぁ」







そんな日をアタシの為に使ってもらってよかったのかな。




20分くらい走ると細い路地に入っていった




店の前まで着くと店員さんらしき人がでてきて高井さんに微笑む




「祐介。久しぶりじゃん」



アタシのほうをちらっとみる




「あれ?女の子??めずらしー」



驚いた顔の店員さんは高井さんと運転を代わりアタシ達は店に入る





店内は暗めでそんなに広くはない



ほんと隠れ家っていう言葉がぴったりのお店。





「車停めてきたからぁ。ほい鍵」




とテーブルの上におく



「あっ沙希ちゃん。こいつこの店のオーナー。こんな小さい店だけどオーナーって言わないと怒るからさ。笑」





「間違いなくオーナーだろうが。俺、清水楓。祐介の幼なじみ。ヨロシクね沙希ちゃん!じゃあいつもの持ってくるわ」





高井さんと同じような笑顔の持ち主はキッチンの方へと入っていった






「仲いいんですね」






「腐れ縁だからね。笑」





「そういうのいいですね」







「沙希ちゃんにもいるだろ?」





「。。はい。笑」









20分後






「お待たせ〜」







そういって楓さんが料理を持ってきてくれた








「えっ。。」





テーブルの上に置かれたのはオムライスとハンバーグ。




「なんだよぉ~」




不思議そうに見るアタシに高井さんが笑う





「なんか高井さんのイメージと違うなと思って。笑」





「沙希ちゃん。コイツ無類のデミ好き。爆」




確かに両方ともいい匂いのするデミグラスソースがたっぷりかかっている







「沙希ちゃん嫌いだった?」





「好きですっ。笑」





オムライスを口いっぱいに頬張る高井さんを見てるだけで幸せだった。




高井さんがトイレに行くために席を立ったあと楓さんがやってきた




何その不適な笑み。。。


「沙希ちゃ〜ん」


ニカッ



「はい?」


「祐介の彼女?」





何を言い出すのやら。。



「違いますよぉ。笑」





「そうなんだぁ。。俺女連れてる祐介初めて見たから」




でも噂になってる女優さんも何人かいるしモテない訳がない。




そんな聞きたい思いを飲み込んだ。




「何二人でコソコソやってんだよ」




高井さんの言葉に


「別にぃ〜」



そう言って笑いながらアタシの方をチラッとみる




そしてまた戻っていった