一番南側にあるオレの席にはたっぷりと太陽が差し、ポカポカと体をあたためる。
普通ならあったかいんだろうけど、なんせ6月、しかも体育のあとだからベストなんて着てられない。クラスの男子も女子も大半がカッターシャツになっている。今は合服の期間だが、もういいんじゃないだろうか。
なこの暑さにうんざりしながら受ける現文なんて全く頭にはいってこない。
キーンコーンカーンコーン
…救われた。
4限が終わるチャイムが鳴り響いて「起立、礼」と室長があいさつをかける。
オレは購買にパンを買いに行くために席から立ち上がった。啓太も買うのだろう、財布を持ってあわててきた。
「一也、俺も行く。」
購買前には少し列ができていた。
オレたちは並んで待っていたが、啓太がトイレに行くと言い出し、オレに財布を預けていった。
「あれ、こんにちは。」
見知った声が聞こえた。
朝聞いたばかりの最近少し口数の増えた声。
愛咲だ。
「愛咲ちゃんも今日はパンなの?」
いつの間にかもどってきた啓太がグイグイ聞いている。お前は彼女持ちだろ!
「あ、はい。
お弁当忘れちゃって…」
愛咲にもそんなことがあるのかと啓太はびっくりしていた。
「食堂じゃなくて購買?」
うちの学校には食堂もある。
「いやだって入りにくいじゃないですか。」
すっかり喋るようになったと感心しながら聞いていたが、オレの財布は今は母さんのおかげで余裕がある。
「なんか買ってやるよ。」
「え、いいですよ!大丈夫です!」
愛咲は悪いと断るが、オレはもう財布から金を取り出していたから、愛咲ももう後にひけない状態だった。
啓太が横からニヤニヤしてたが気にしないふりをして「どれがいい?」と愛咲に聞いていた。
「え、じゃあ、これとこれと」
「愛咲、奢ってもらうとなると遠慮ないのね」
愛咲は次々とパンを選び、オレは心の中から母さんに全力でお礼を言った。