「カズ、キャッチボールしよう!」


飛んでいく白球、弾ける笑顔。

いつからオレはこいつが好きなんだっけ。


…なんていう夢を見た。

オレは上半身だけ起こすと

しばらくボーっとしてた。

あの夢はいつ頃のオレたちだろうか。

もう野球やってたから小4だろうか。


カズ、なんてよんでた愛咲は今ではオレの後輩となり、笹原先輩なんて仰々しい名前で呼ぶようになってしまった。

歳がひとつ違うくらいですごい変わりようだ。

小学生の時、同じ少年野球チームで家が近いやつなんて愛咲くらいしかいなかったから嫌でも仲良くなった。
野球をする愛咲は楽しそうだった。
いつも笑ってた。

…だから好きになったのか。

なんてことを考えながらセカバンを取り出して学校へ行くと準備をする。




ピンポーン



家のインターホンだ。
「一也、愛咲ちゃん!」

ウチの一番上の兄貴が叫んでドアを開ける。

パンを口に入れたままだから思うように返事もできないまま、玄関へと走って行った。


「おはようございます。」

「お、おはよ。」

オレは若干息を切らしながら愛咲にあいさつする。
髪は少しボサボサ、メガネもちゃんと掛けれてないしちょっと不安…

「じゃあ、行きますか?」
愛咲は本来ならば男子がいうようなセリフもあっさりと言ってしまう。


普段から無表情で無口、口を開けば毒舌、しかも性格は天然だから全く悪気なしという咲愛も
昔はよく笑っていた。


愛咲が笑わなくなったのは



3年前だった---。