《如月花恋です。
わざわざ送ってもらっちゃってごめんね。
ありがとう》


家に帰った私は、陽都君にメールを送信してソファーに寝転んだ。

陽都君の家と私の家は、意外にも徒歩10分ほどしか離れていなかったことにビックリだった。

ピロリン♪


うわっ、返信早っ!


私は飛び起きて、ケータイをつかんだ。


《おー、登録しとくねー
全然いーよ、雷に怯える花恋のかわいーとこ見れたし笑
つか意外と俺達の家近かったんだな》


…お、おぉ!?
か…かわいいですと…!?
え、あ…でもノリかな?
語尾に「笑」ってついてるし…


しばらく考え込んだ私は、返信画面にもっていった。


《いやいや、かわいいなんてお世辞いいよ(笑)
そうだね、近かったねー
ビックリだΣ( ̄□ ̄)!》


―送信完了―


…それにしても、まさか一緒に帰れるなんて思いもしなかったな…
帰り道も同じだったし…
…あ、でもなんでだろ?
陽都君、部活あったはずじゃ…


ピロリン♪


返信早いな…


《番号教えてー?》


《090××××だよ》


……陽都君…
あ、陽都君の番号も聞けば良かったな…


ピリリリリリ…


「ん?」


急に鳴った着信音にビックリしつつディスプレイを見ると、知らない番号が表示されていた。

私は首を傾げながらも電話に出た。


「…?
もしもし…」

《…花恋?》

「…!?
は、陽都君…?」

思わず声が裏返ってしまった私。

《うん、メールするくらいなら電話でいいやってー》


電話越しの陽都君の声が、直接話してるときよりも低くてドキドキする。


私は動揺を悟られないように平然を装った。


「そ、そっか…」


そして数秒の沈黙のあと、陽都君が口を開いた。


《…あのさ、さっきのメール、お世辞じゃないからね?
花恋ほんとかわいいよ?》

「…!?
…え…いやっ…それはっ…」


予想外な陽都君の言葉に、ほっぺが熱くなる。


《はは。
焦ってるね、かわいーよ!!》

「…っ…」

《あ、ねぇ明日も一緒に帰ろ?》

「え…あ、でも陽都君は部活…」

《明日はねーよ?
顧問が出張でいないからバスケ部休みだよ》


…明日…"は"…?
…あれ?


「…え、今日は部活あった…んだよね?」

《え…あー…
…まぁ…》

「…どうしてでなかったの?」

《あー…なんとなく?
たまにはサボり?みたいな》

「そうなんだ…」

《明日、下駄箱で待ってるね》

「…あ、うん…」

それから数秒の沈黙。

先に口を開いたのは陽都君。

《……ね、花恋さ…》

「…うん?」

《…花恋は今、す……
あ、やべ…
ごめん、キャッチフォンだ…
あとでメールするね》

「え…あ、うん…ばいばい…」

《ごめんね、ばいばい》


電話を切った私は、首を傾げるしかなかった。


陽都君は何を聞きたかったんだろう…
まぁいっか、あとでメールしてくれるって言ってたし…


ケータイを閉じた私は、高鳴る胸にソッと右手をあてた。

しかし…

そのあと、いくら待っても陽都君からメールが来ることはなかった…。



―翌朝―


昨日のメールの件があり、少ししょげながら登校してきた私。

「如月」

下駄箱のところで誰かに呼び止められた。

ビックリして振り向くと、加々見君が立っていた。

「あ、おはよう…?」

「おはよ。
…如月、昨日陽都と一緒に帰ったろ?」

「え…うん」


あ…もしかして、陽都君が昨日部活サボったから…


「…あいつ、ほんとは昨日部活出るはずだったんだよ。
でも体育館行く途中、下駄箱で雷に怯えて立ち尽くしてる如月を見かけて…
陽都、バッシュとユニホーム俺に押し付けて、急用できたから帰るって」

「…え?」


…それって…


「…あいつの…優しさ。
あと今日は朝練も放課後も部活無いから、15分にロッカーいても意味ないよ」

加々見君はそう言うと、私の横を通って行ってしまった。

「……」

残された私は立ち尽くしてしまった。


…そっか。
昨日陽都君と一緒に帰れたのは、偶然じゃなくて必然だったんだ…。
陽都君が私の…為に…?
陽都君の優しさだったんだ…
私が雷、怖がってたから…
陽都君は見てたんだ…


ドキン…

胸が高鳴る。

優しい陽都君…
…陽都君。

やっぱり…すき。


「……」


……あれ?

今加々見君、15分にロッカーいても意味ないよって…
…あれ?


「…!!」


ばれてたの…!?