顔を上げると、口元を押さえているカイリと目が合う。


「今のって……」


わたしの聞き間違い?


「千晶が帰って来ないと、心配で眠れねーし、飯も食えねぇっつーのに……」



頭をガシガシと掻くカイリ。
わたしはブーツを脱ぎ捨て、カイリに抱きついた。


「カイリ、好きだよっ!」


「…うん」



この時、わたしは幸せで肝心なことを忘れていた。
カイリの口から、まだ『好き』って聞いていないってこと。



記念日まで、後1日。