「はぁ…」
弁当忘れるとは思わなかった…。たまたま鞄に300円入ってたからまだ良かったけど。
今日は生徒会の仕事があって、午後までいなきゃいけなかった。
「300円…パンと飲み物くらいか」
足りないな、そんなことを考えていると、
「…あ、八幡さん」
「あ…、光井先輩…」
八幡さんが家から持ってきたらしき弁当を膝にのせて、一人でベンチに座っていた。
「あぁ、あの子とお昼か。一人かと思って吃驚したよ」
遠くに電話をしている同じ制服の子がいた。…名前は…美紗…だっけ?
八幡さんははい、とだけ返事をした。僕は咄嗟に話を続けようとしていた。
「わ、美味しそうだね」
「あ…ありがとうございます…」
八幡さんは何か言いたげに、目を泳がせていた。
僕はベンチの八幡さんから一番遠い位置に座った。
「あの…」
「ん?」
やっと話しかけてくれた。でも彼女は気まずそうだった。
次に彼女から発せられた言葉は、耳を塞ぎたくなるようなことだった。
「み…光井先輩、り…鈴木陸っていう人知っていますか…?」