「八幡さん、鈴木陸と知り合い?」
「知り合い…じゃな…いや知り合いです」
さすがに元カノとは言えなかった。今の私でもそんな勇気はない。
「ふーん…彼女?」
「っ…!」
先輩の言っていることは間違っているけど、確信を突かれた感じがした。
「楽しい?」
「え…?」
先輩はやっと私の方を向いた。切ないような、嘲笑うかのような表情で私に問い掛けた。
「鈴木陸と付き合って、良いことある?」
「え…いや…」
さっきまでの無駄な勇気はなんだったんだろう。急に聞いたことを後悔した。
私を真っ直ぐ見つめる先輩の目を見ると、逃げたくなるような気持ちになった。
「あの、今は付き合って無い…」
「過去形なんだ。」
「あ、」
私から質問したのに立場が逆になってしまった…。
「ふふ、八幡さんわかりやすいね」
いきなり目眩がした。動機がする。寒気がする。
話を続ける先輩の声が段々あいつの声と重なってきた。