「え?うん、まぁ」
特に気まずいといった様子もなく、私は思わず聞いてしまった。
「光井先輩って鈴木陸と兄だ…」
「やめろ」
私が言い終わるより先に、強い口調で否定した。
驚いた私はしばらく声が出なかった。
「何、鈴木陸がどうかしたの?」
「え…いや、あの…」
先輩は私の方を向かずに遠くを見ていた。
その声は、今までの優しい声ではなく、無感情なものだった。
「とにかくその人話はすんなよ。虫酸が走る」
「あ、はい、すいま…」
「あ、光井先輩じゃないですかー」
電話が終わったらしく、美紗が私たちの方に向かってきた。
「あ、お邪魔してごめんね…」
「わーっまた電話かかってきたーっ」
美紗は私の方を見て、大声で言った。
わ…わざとらしいよ…
「ん?あぁ…」
美紗はまた行ってしまった。
余計なお世話だけど、折角気遣ってくれたし…
「じゃ、またね…」
「先輩」
帰ろうと立ち上がった先輩を呼び止めた。
何でか、私は凄く落ち着いていた。
「教えてください。鈴木陸とのこと」