「あー、私の家の隣の隣の隣、ヤーさんやわ」
「それほんまの話?」
ほんま、ほんま!
そう言って興奮気味に話を進めるのは、バイト先のレジ担当、大田真奈美だ。
わたしと同い年で、瀬戸翔風商業高等学校3年生、情報システムクラスに所属している。
学年は一緒だけれど、クラスが違う為接点はなかったが、コンビニのオープニングスタッフとして顔を合わせてから、学校でも彼女と気軽に話すことができている。
ちなみにわたしは会計クラス。
主に簿記を中心に勉強をしている。2年生の時に、週三日連続二時限ぶっ通しで会計を学んだおかげで、全商簿記一級を取得。
日商簿記という、もうひとランク上の検定に挑戦してみいひんか! と、担任の大柴涼汰はわたしの可能性に賭けているけれど、わたしはそんな危ない橋を渡ることはしない。
どちらかといえば、石橋を叩いて渡るほうなのだ。
「ね、環。もしヤーさんから電話あったらさ、その人私に紹介してや」
「はあ?」
「なんか、憧れへん? 極道との恋、ってさ!」
「真奈美だけやろ」