ドアの音がした途端、ラミアスとイルは黙った。
ラミアスが静かにため息をついた。
それを見たイルは口を開いた。
「....俺はアニアさんのああいうところが嫌いです。好きになれません。」
「....。」
ラミアスは無言だった。
「ラミアスはアニアさんが好きなのですか?」
イルは率直に聞く。
ラミアスがつかの間の沈黙から口を開いた。
「....アニアは多分、周りに無関心なんだ。その....昔から人と関わることがほとんどなかったんじゃないか?」
シンシアは『好き』という言葉を聞かなくて少し安心した。
そしてラミアスに尊敬の念を持った。
確かにアニアはフェアリークイーンとして対等に関わった人はいないかもしれない。
アニアは小さい頃、どこに住んでたのか。
それさえもシンシアは知らない。
イルはラミアスの言葉にただ
「なるほどですね。」
とだけ言った。
「そういえば、シンシアはアニアのこと知らないのか?」
ラミアスに急に話をふられたシンシアは驚いた。
「えっ....、知らないよ。私達最近契約を結んだんだから。」
イルは思い出したように口を開いた。
「....そういえば、アニアさんとシンシアさんは何の契約をしたのですか?」
....この人、鋭い。
シンシアは平静を装い答えた。
「私は、鍵を見つけてもらう契約をしたよ。」
「ほう、アニアさんは?」
「....。」
シンシアはマローニに助けを求める。
マローニが慌てて言った。
「....、あの、話の途中で申し訳ありませんがアニアは....馬車を買いに行っちゃいましたよね?わたし達は行かないでよろしいのでしょうか?」
シンシアは心の中で嬉し涙を流した。
でかしたマローニ!
イルは納得したように言った。
「そうですね。とりあえず、馬車屋に行きましょう。」
ラミアスはそれを聞いてから言った。
「おい、それを言うのは俺じゃないのか?」
目が怖い。
「....そうなんですか?どうして俺が言ってはいけないのでしょうか?」
すごくどうでもいいわけのわからない話をしながら、2人はミカドを挟んで部屋を出た。
「ちょっ....何だよ!いきなり!」
しーんとした中でシンシアとマローニは顔を見合わせた。