テルミトラは、お城の2階にある秘密諜報部の研究室に行った。

諜報部とあって、表舞台に立つことはなかなかない。

しかも、部屋で仕事をするのはナーシャただ一人だ。

この部屋が人に知れ渡ることはきっとないだろう。

テルミトラが扉を疲れた様子で開けたとき、彼女は口にキャンディーを挟み、本を読んでいた。

ナーシャはテルミトラを見るやビックリしてキャンディーを落とした。

そして、ああもったいない……という顔でキャンディーを見つめた。


しばらくして、思い出したかのようにテルミトラを見た。

「……かなりのお美人さんのテルミトラ様じゃありませんか。滅多に滅多に使われないこの部屋に何の御用で。」

あまりにもそっけない言い方だった。

ナーシャの問いにわかっているだろうにと、テルミトラは内心ふてくされて答えた。

「……鍵のレーダー見せて。」

ナーシャはやっぱりという顔で隣にある段ボールを片手であさりながら尋ねる。

「で、どの鍵ですか?」

テルミトラは返答に困った。


あまりにも重要な鍵だからだ。

「………。八世の鍵。そのうちの七個。」

悩んだ末に答えたテルミトラの言葉に身分の差も忘れ、ナーシャは切れて言いまくった。

「はあ?何やってんの?あんた。あれがどれ程重要な鍵かわかってんの??使い方次第で、一つの種族を壊滅させられるのよ?そして、あの鍵に眠っているのは我が国の国民……すなわち我が国の宝よ?妖精よ!!!状況飲み込めているのよね?あんたはきっと油断していたんでしょ?どうせ、玉座の肘掛けにでも置いて他の何かも持ってこようとしてたんでしょ!!!?……。」


テルミトラは図星になり、固まった。

私の考えはあまりにも愚かだった……。

そして、ナーシャに土下座した。

「ご……ごめんなさい。私が馬鹿きまわりないことをしたってひどく反省しているの。だから、私、責任を取って、鍵を探しにいくわ!」

ナーシャは我に帰った。

だが、テルミトラの最後の言葉を聞き逃していた。

その事には気づかない。

「あなたが反省していることはよくわかりました。とにかく、取り返せば大丈夫です。」

ナーシャはそう言いながら、やっと目当てのものを見つけた。

早速それを取り出して、スイッチを押す。

一瞬の間を置き、機械がブーンと唸り、作動を始めた。

そして、モニターが出てきた。

ナーシャはざっとそれを読んでいった。

「人間界のあらゆるところに分散して鍵があります。動きが全くないのを見ると、置いてあると予測できます。いつ動くかわかりませんが、その鍵を我が国から辿ると、だんだん魔界の近くに行ってますね。ちょっと悪魔レーダーも押して見ましたが、悪魔は鍵の近くにはいないようです。変ですね……。魔物は近くにいるので、鍵を魔物に守らせているということでしょうか。それよりも、この鍵の位置は悪魔と関係がありそうです。」

テルミトラはビックリした。

もっとのんびりしている人だとおもっていた。
こんなに早く分析し、結論に至るとは。

「前にもこのようなことがあったの?」

思わず聞いてしまう。

忙しいだろうに……。

そんな時間を費やすような問いにもナーシャは普通に答えてくれた。

「はい。ただ……八世の鍵は一度もありませんでしたが……。そのときも同じような対処をしたまでです。今から、百年前に一度……。鍵のことは誰にも漏らさないのでご安心を。テルミトラ様の大失態が周囲に知れ渡ったら、大変なことになりますからねぇ……。」

最後のは嫌みにしかテルミトラには聞こえなかった。

「じゃあ、私が直接現場に行けば良いのね♪行ってくるわ。」

テルミトラはそう言い残し、部屋を出ていった。

後には、

「はあ?」

と、答えたナーシャが残っているだけであった。