アニアに話しかけた男は大柄で、野蛮そうに見える。



アニアは冷静な顔つきで答えた。



「....聞いたことがないわね。」


「こう言えばわかると言っていたな。森であった男、冷めた黒髪の男。」


アニアは眉を寄せた。


「やっぱり、あいつ....。」


「知っているのか。じゃあ、伝言だ。『次の洞窟でも楽しい勝負を期待している』だそうだ。意味は知らんが、俺はきちんと伝えたからな。」


男はそれだけ言うと去っていった。


「来たんだわ。ここに....。」


アニアはぼそりと呟いた。


イルはその言葉を逃さなかった。


「....アニア。何があったのですか?」


アニアは静かな声で言った。



「悪魔よ。」


悪魔という言葉を聞いたことがないイルはアニアが何を言っているのか分からなかった。



そんなイルを急かすように言った。



「悪いんだけど、急いでくれる?早く宿へ行かなければ、遅刻するわ。」


「あ、ええ。そうですね。」


イルは混乱したまま答え、先を走るアニアを追った。