全員が起きて、顔を合わせたのは次の日の朝だった。


全員は宿のホールに集まった。


アニア以外はガーゼをほっぺに貼り付けている。


他人から見れば何の集団だ、と思われるだろう。


アニアが口を開く。


「馬車がボロボロだから買いたいわ。有り金はいくらあるの?」


「俺は一文無し。」


ミカドが当たり前のように言う。


「私とマローニはもちろん一文無しよ。」

シンシアも続く。


「実は、俺も急いでいたから、金は....。」


ラミアスはすまなそうに言った。


そしてアニアを除く全員がイルを見る。


「俺は2万トロピカル....でしょうか。」


イルは目をそらして言った。


シンシアとミカドの目が光った。


アニアはため息をついた。


「はあ....。そんなお金で馬車が買えるわけないでしょう。100万トロピカルはないと。」


全員が驚く。

「そんなお金あるわけないじゃない!!」


シンシアは叫んだ。


「....じゃあ、今日は皆働いて。充分な資金を集めて頂戴。」


アニアは真顔になり言った。


もともと真顔だが。


全員はアニアに驚きの目を向けている。


アニアはそんな皆の反応が嫌になり、先に宿を出た。


ラミアスはそんなアニアを追うようにして、外へ出た。


アニアはとにかく歩いて目的の場所まで行った。


そして、目の前の建物を見据えた。


いかにも神々しく建つ建物は闘技場。


戦うための場所だ。

お金も稼げる。


「ほう....。アニアはこの店で働くのですね。」


イルがいきなり後ろから声をかけてきた。


アニアはビクッとしたが、おくびにも出さずに訂正した。


「働くのでなく、客として入るのよ。....ところで私をつけてきたの?」


「いいえ。俺もこの闘技場で稼ごうと思いまして。ところで、そんな細い体のあなたが闘技場できちんと稼げるのですか?」

イルはニコリとして言った。

アニアはカチンと来て言い返した。

「もちろんよ。決勝で当たったら、すんなりあなたが負けると思うわ。」

「へえ、それは楽しみですね。」

イルは話しながら、歩き始める。


「ええ。楽しみにしていて頂戴。」


アニアも歩き始めた。