シンシアは馬車のドアを閉め、窓には妖精界特有のガラスを取り付けた。




ミカドとラミアスは馬の操縦席に乗る。



「シンシア。」



ラミアスの優しい声にシンシアは真っ赤になって返答した。



「はい…。」



「なんだ?それ。」



期待を外れたラミアスの言葉にシンシアはバランスを崩して倒れた。



ラミアスはシンシアがこけたので首をかしげた。



「妖精界特有のガラスだよ。悪魔避けにもなり、割れにくいの。この窓はずっと開きっぱで怖いから念のためだよ。」


ラミアスはシンシアの言葉に納得したように


「へ~。」


と返答した。



馬車はそれを合図に出発し、暗い森に入った。




シンシアは自分の服のポケットからランプを取り出して明かりをつけた。




すると、暗い森がうっすらと見えた。



「ねえ、魔物は出てこないけど…。」


シンシアは不思議に思った。


そう。



バリア魔法は一切発動していないのに魔物が近寄ってこないのだ。



一応アニアから預かった装置があるものの。



ふと、馬車が急停止した。



ラミアスは


「なんだ?なんだ?」



と叫び混乱しているようだ。




ミカドは冷静に馬車から飛び降り、馬の前に行った。




「魔物の死骸だ.……。」


なんと、この辺一帯に魔物の死骸があるのだ。



しかも、争っていた跡まで残っている。



ミカドは無言で馬車に乗り、馬にそこを避けるように進ませた。



ミカドは言った。



「魔物の乱闘の跡らしきものがあった。多分仲間割れだろうな。」





シンシアは驚いた。



「じゃあ、アニアは?」



「アニアが戦えるわけないだろ?」


ラミアスはシンシアに反論する。



静かにミカドが言った。



「アニアの死体は無かったから、きっともっと先にいるんだろ。馬の速度をあげる。」



「いいけど、死体なんて物騒なこと言わないでよね!」