『セレビア国の西には広大な森が広がっている。
森には人影は無く、人が自ら入ろうとするなど滅多になかった。
やがて時が経つにつれ、森はさらに黒くなり、中に入ったものたちは出れなくなる。
しかし、命からがら抜け出した運の良い生存者は言った。
「私は、悪魔に殺されかけた。」
と。
人々はそれからこの森を悪魔の森と名付け、今なお恐れられている。』
(知りたい情報を一瞬で教えてくれる本、世界の童話集より抜粋より)
そんな森が実際に目の前にある。
確かに、目の前の森は太陽が光を差しているのに受け付けず、自分の影の色で染まっている様だった。
ラミアスもミカドも森を目前にして怖じ気づいている。
シンシアも顔がひきつっている。
アニアは彼らを一瞥し、呆れた。
別に、あれは単なる噂。
そして、殺されかけた人もパシオダニという植物の花粉にやられ混乱に陥ったのだろう。
あれは人間界では非常に稀な花。
花粉が森を覆っている匂いを感じる。
いずれにしろ、鍵はここにある。
入らなくてはいけないのよ。
アニアはためないもなく足を前に出す。
するとラミアスが驚いたように言った。
「お前、まさかそのまま中へ入る気なのか?悪魔に殺されるぞ!?」
やっぱりセレビア国の人間なのね。
そう思いながらアニアは平然として答える。
「ええ。ここまで来て断念するなんて私の脳内に存在しないの。むしろ怖がっている方が不思議だわ。」
アニアの答えは三人にとって異質なものであった。
三人が絶句している間にもアニアはバックからマントを取り出して歩き出した。
そして、笑顔で振り返る。
「ラミアス、ミカド。今までありがとう。送るのはここまでという約束だったから、ここでお別れね。さようなら。」
ラミアスはそれを聞いてシンシアを見た。
シンシアは涙目でブルブルと震えている。
アニアはそれを見るとため息をつき、ラミアスが聞いたことのないような恐ろしい声で言った。
「シンシア?今、この場であなたを森に投げても良いのよ?」
顔が笑顔なので余計に怖い。
そんなアニアにラミアスは鳥肌がたった。
シンシアはミカドの服を手でつかみ、首をブンブン振っている。
ミカドはそれを見て言う。
「馬車で行くか?そうすれば少しは怖さもましだろ?」
シンシアはミカドの服から手を離して聞いた。
「あんたまで言うの?」
「だって、お前らは森の奥まで行かなきゃいけないんだろ?だったら、みんなで行った方が良いじゃねえか。それに俺もラミアスが無事逃げ出せたんだから、もう契約の意味はねえし、丁度暇してたんだ。」
そう言われシンシアは押し黙り、ラミアスはえっ、というような顔をした。
「おい、ミカド。契約はおしまいなのか!?」
ミカドは淡々と答える。
「ああ。ラミアスは無事にセレビア国の領域を抜け出せただろ?そこで契約は終わっていたんだ。」
「.……。」
ラミアスは無言で悲しそうにしている。
「…ちょっと.……。こんなところで何をしているの?私は、先へ行っちゃうわよ。…あ、もちろんミカドも来なさいよ。これは強制よ。」
すたすたとそう言いながら、アニアは森へ入ってしまった。
シンシアたちはポカンと一瞬したが気を取り直して、口を結んだ。
「ああっと、俺は強制で森に行かなければいかなくなったみたいだ。」
ミカドはそう言って真剣な目でラミアスを見る。
「ラミアス。妖精は契約が終わったからって帰る奴は少ないんだ。多くの妖精はパートナーに気を許してそこに留まるんだ。まっ、それは契約の結び方が上手いからかもしんないけどな。」
ミカドはさらに続ける。
「だから、俺も契約は終わったけど、もっとラミアスと世界を見たいんだ。どうだ?面白いだろ。」
ラミアスはそれを聞くとミカドに抱きついた。
ミカドは驚いて尻餅をついた。
「おい、ラミアス!一体どうしたんだ?」
シンシアはそれを微笑ましく見ていたが自分の(仮だけど)契約の主が悪魔の森の中にいるのを思い出すと気分が悪くなった。
「ねえ、そろそろ行かないと、アニアが.……。」
ラミアスはにっこりして言った。
「じゃあ、俺らもその鍵を探すの手伝うよ。丁度暇だしな。」
「おい、それさっき俺が言ったん「おい、ミカド。おせーぞ。」
ミカドが言い終わる前にラミアスは馬車に乗り込んだ。
「…話している最中だぞ。」
「いいから。早く。」
「……。」
ミカドはラミアスに負け、とうとう馬車に乗り込んだ。
シンシアも笑いながらそのあとに乗る。
森には人影は無く、人が自ら入ろうとするなど滅多になかった。
やがて時が経つにつれ、森はさらに黒くなり、中に入ったものたちは出れなくなる。
しかし、命からがら抜け出した運の良い生存者は言った。
「私は、悪魔に殺されかけた。」
と。
人々はそれからこの森を悪魔の森と名付け、今なお恐れられている。』
(知りたい情報を一瞬で教えてくれる本、世界の童話集より抜粋より)
そんな森が実際に目の前にある。
確かに、目の前の森は太陽が光を差しているのに受け付けず、自分の影の色で染まっている様だった。
ラミアスもミカドも森を目前にして怖じ気づいている。
シンシアも顔がひきつっている。
アニアは彼らを一瞥し、呆れた。
別に、あれは単なる噂。
そして、殺されかけた人もパシオダニという植物の花粉にやられ混乱に陥ったのだろう。
あれは人間界では非常に稀な花。
花粉が森を覆っている匂いを感じる。
いずれにしろ、鍵はここにある。
入らなくてはいけないのよ。
アニアはためないもなく足を前に出す。
するとラミアスが驚いたように言った。
「お前、まさかそのまま中へ入る気なのか?悪魔に殺されるぞ!?」
やっぱりセレビア国の人間なのね。
そう思いながらアニアは平然として答える。
「ええ。ここまで来て断念するなんて私の脳内に存在しないの。むしろ怖がっている方が不思議だわ。」
アニアの答えは三人にとって異質なものであった。
三人が絶句している間にもアニアはバックからマントを取り出して歩き出した。
そして、笑顔で振り返る。
「ラミアス、ミカド。今までありがとう。送るのはここまでという約束だったから、ここでお別れね。さようなら。」
ラミアスはそれを聞いてシンシアを見た。
シンシアは涙目でブルブルと震えている。
アニアはそれを見るとため息をつき、ラミアスが聞いたことのないような恐ろしい声で言った。
「シンシア?今、この場であなたを森に投げても良いのよ?」
顔が笑顔なので余計に怖い。
そんなアニアにラミアスは鳥肌がたった。
シンシアはミカドの服を手でつかみ、首をブンブン振っている。
ミカドはそれを見て言う。
「馬車で行くか?そうすれば少しは怖さもましだろ?」
シンシアはミカドの服から手を離して聞いた。
「あんたまで言うの?」
「だって、お前らは森の奥まで行かなきゃいけないんだろ?だったら、みんなで行った方が良いじゃねえか。それに俺もラミアスが無事逃げ出せたんだから、もう契約の意味はねえし、丁度暇してたんだ。」
そう言われシンシアは押し黙り、ラミアスはえっ、というような顔をした。
「おい、ミカド。契約はおしまいなのか!?」
ミカドは淡々と答える。
「ああ。ラミアスは無事にセレビア国の領域を抜け出せただろ?そこで契約は終わっていたんだ。」
「.……。」
ラミアスは無言で悲しそうにしている。
「…ちょっと.……。こんなところで何をしているの?私は、先へ行っちゃうわよ。…あ、もちろんミカドも来なさいよ。これは強制よ。」
すたすたとそう言いながら、アニアは森へ入ってしまった。
シンシアたちはポカンと一瞬したが気を取り直して、口を結んだ。
「ああっと、俺は強制で森に行かなければいかなくなったみたいだ。」
ミカドはそう言って真剣な目でラミアスを見る。
「ラミアス。妖精は契約が終わったからって帰る奴は少ないんだ。多くの妖精はパートナーに気を許してそこに留まるんだ。まっ、それは契約の結び方が上手いからかもしんないけどな。」
ミカドはさらに続ける。
「だから、俺も契約は終わったけど、もっとラミアスと世界を見たいんだ。どうだ?面白いだろ。」
ラミアスはそれを聞くとミカドに抱きついた。
ミカドは驚いて尻餅をついた。
「おい、ラミアス!一体どうしたんだ?」
シンシアはそれを微笑ましく見ていたが自分の(仮だけど)契約の主が悪魔の森の中にいるのを思い出すと気分が悪くなった。
「ねえ、そろそろ行かないと、アニアが.……。」
ラミアスはにっこりして言った。
「じゃあ、俺らもその鍵を探すの手伝うよ。丁度暇だしな。」
「おい、それさっき俺が言ったん「おい、ミカド。おせーぞ。」
ミカドが言い終わる前にラミアスは馬車に乗り込んだ。
「…話している最中だぞ。」
「いいから。早く。」
「……。」
ミカドはラミアスに負け、とうとう馬車に乗り込んだ。
シンシアも笑いながらそのあとに乗る。