記憶を失くしたわがまま彼♡





次の日学校に着くと、




「美緒、急に倒れて大丈夫⁇すっごい心配したんだから‼︎」




と愛香に言われた。





「本当に、ごめんね……」





「全然構わないんだけど、元気ないね……」





「そんな事ないよ……?」






私は明るい笑顔を作った。





「ごめん、美緒。今その笑顔見るの辛い……それとも私じゃ頼りないかな…?」





「そ、そんなことない‼︎でも、愛香に迷惑かけちゃうから…」




「美緒に迷惑なんて思うわけないでしょ‼︎よし、私に話してみて‼︎」





と2人で屋上へ行った






愛香には何でも分かっちゃうんだね……




愛香、ありがとう…









私は、昨日の事を全て話した




「美緒」




「……?」




「ごめん、私、一ノ瀬に記憶ないの知ってたの……」





「えっ……」





「前に、美緒に対する態度の事で文句言ってた時に聞いちゃったの……」





「そう…なんだ……」





「本当はすぐ言うつもりだったんだけど……ごめんね……」





「い、いいの‼︎私に気を使ってくれたんだよね⁇ありがとう…」





「でも、それを一ノ瀬に言わないで付き合って……本当に最低だよね……ごめんね……」






「私は、2人が付き合ってくれて嬉しいよ⁇2人が幸せならそれでいいの……」





「みーおーーー」





愛香が抱きついてきた。





「美緒、ありがとう…本当にありがとう……




……でも、これからどうする?」





「それで、愛香にお願いがあるの……」





「……?」





「一ノ瀬には私の事言わないで、今まで通りに接して?」




「えっ……」










「私には、尚人くんがいるし…それに、今の方が皆にとっていいから……」




「美緒……本当にそれで、いいの?」




「うん……」





「分かった……」





「ありがとう…じゃあ、この事はなかった事にね‼︎」





と言って教室へ戻った。






教室に入ると





「美緒」





「尚人くん…おはよう…」





「おはよう、大丈夫か?ごめん、昨日委員で付き添いできなくて……」




そんな事気にしてくれている所も優しい……




私にはこんなに優しい彼氏がいる



だから、4年前の恋とはさよならしないとね……




「うん‼︎ありがとう」




私は出来るだけ笑顔で振舞った。




尚人くんは、少し顔が曇ったけど、またいつもの笑顔になって




「そっか、なら良かった。」





と言ってくれた。






風斗side


俺は一体何の夢を見ていたんだ…?



俺は病室でずっとその事について、考えていた。



普段なら、夢を忘れても気にしないのに、今回はなぜか気になって仕方がない……




「何だったっけ……」




俺が呟いた時、病院の先生が入ってきた。




「具合はどうだい?」



「だいぶ良くなりました…」




「1つ聞くよ。今回意識がなかった間何か夢を見なかったかい?」




夢……





「わか、りません……」





「そうか…今回君が倒れたのは、後遺症によるものだと思う……」




「後遺症…って何すか?」




「後遺症にも色々あるんだが、君の場合は、記憶のない時の事を思い出す時に起こる可能性が高いと思う。」




記憶を…思い出す……










記憶を思い出せるのか…?




「記憶は…戻るんですか?」




「今はまだ、何とも言えないな…何か自分で心当たりはないかな?」





心当たり…





そう聞かれて、真っ先に思い出したのが、渡り廊下の時の事だった





「渡り廊下…」




「渡り廊下?そこで何があったんだ?」





「友達…がキス…をしていて、それを見たら苦しくなって……」




「うん…」





「頭に一瞬浮かんだんです…小さい女の子の微笑む姿が……」


















「そうか…もしかしたら、記憶が戻りかけているのかもしれないな……」




「本当っすか⁇」




「あぁ、でも嬉しそうだね、何かあるのか?」





「何か大切な事を忘れている気がして…」





その時、頭がぐらっときた





「うっ……」




「一ノ瀬君‼︎」





そこから、俺はまた意識を手放した。









学校……


あれ?どこかで見た事あるな




どこだったか…?






女の子がいる











この子も見た事ある….




笑ってる…




“風斗くん‼︎風斗くん‼︎”




俺を呼んでるのか…?





“風斗くん?聞いてる?”





誰なんだ?




“誰だ……?”





“風斗くん、みおの事忘れちゃったの……?”





み…お……?





どこかで聞いたことある……?





みお……みお……





──────────────────










「……瀬君、一ノ瀬君‼︎」




先生がいた…




「気付いたようだね」





「みお……」





「え?」





「夢を見ていた気がするんです…よく覚えていないけど、女の子がいて、名前がみおだった…」





みお……あれは誰だったのだろう…





「みおちゃん…っていう子に心当たりあるかい?」





「みお……どこかで聞いた気がするけど…あぁ‼︎思い出せねぇ…」





「まぁ、無理に思い出さない方がいいけど……でも、夢で覚えているのはその子1人だけなんだよね?」






「…はい」






みお……みお……みお……





ダメだわかんねぇ…





「もしかしたら、小学校の頃その子となにかあったんじゃないかな?」






「何か…?」





「いや、確実ではないけど、特別な何かがあったのかもと思ってね…」






「特別な何か…」





「そういえば、前に病院に付き添いに来てくれた子とはどういう関係なの?」





付き添い…




「同じクラスの市川………あっ‼︎…」















確か前に山下が…




“あんた、本当に美緒の事覚えてないの?”




と言っていた…





そうだ、市川の下の名前……























美緒だ………





「…何か分かったのかい?」





「……付き添いに来ていた子の名前が“市川 美緒”っていうんです…」





市川は、入学式に小学校が一緒だったって言ってた……






嘘だと思ったけど本当だったのか…?






でも、だったら何で市川だけ夢に出てくるんだ……






「美緒ちゃんって子と昔会っていた記憶は……?」






「…思い出せません」





「そうか…まぁ急ぐ事でもないからな、また今回みたいな症状が出るかもしれないけど、悪いものではないから安心していい」







「はぁ…」





「明日から学校に行ってもいいよ」





「分かりました…」





学校に行って市川に会えば何か思い出せるのか………?





俺は何を忘れているんだ……?