田中くんが荷物を持ってくれて
ゆっくり歩き始めた。
いつもは何かしら会話があるけど
今日は何も会話がない。
理由は分かってる。
私も田中くんも
牧野くんのこと考えてるから。
「あれ、美咲ちゃん?」
正門に誰かがもたれかかっている。
背格好は美咲ちゃんとよく似てる。
でも、この距離だとはっきりは
見えないから断言はできない。
「うん、そうみたい」
さっきよりも近づいたところで
田中くんが静かに言った。
「あ・・・おはよう」
私たちが来たことに気づいた
美咲ちゃんは元気なく笑った。
牧野くんと何かあったのかな?
「おはよう。春馬と何かあった?」
田中くんも同じこと考えてたんだ。