牧野くんは1日中誰とも話してなかった。
美咲ちゃんの用事はそんなにも
牧野くんを追い詰めることだったの?
お兄さん、入院してるって言いかけたっけ。
「あ、春馬・・・」
帰りのHRが終わって教室を出ようとしてる
牧野くんに田中くんが声をかけた。
牧野くんはゆっくり振り向いて
困ったように笑った。
牧野くんでもあんな風に笑うんだ。
「蒼海ごめん。しばらくそっとしといて」
牧野くんは田中くんに返事をする間も
与えずにそのまま出て行った。
私は窓から外を見て、正門にお母さんの
車が停まっているのを確認した。
「・・・田中くん、お母さんが来てる。
追いかけるならそう言っとくけど・・・」
田中くんが追いかけたいなら
それを邪魔する権利は私にはないから。
「いや、行くよ。渡す物あるし」
でも田中くんは笑顔でそう行った。