「…変わって欲しくないっていうのは、そういう事じゃないんだ」


それは私の涙が落ち着いた頃に、トウマさんが発した言葉だった。


「どうあっても君は君だ。君が君でいてくれれば…俺はそれでいい」


そう言って抱き締めてくれていた腕をほどいたトウマさんと、私は向かい合う。

真っ正面に見据えるのは、いつもの彼の灰色の瞳。奥に潜んだ感情がゆらりと揺らめく。


ーー君が君であればいい、なんて、だったらなんでそんな瞳で私を見るんだ。なんで私にあんな事を言ったんだ。

そう思っても、私が口を開くより先に彼の口は続きを紡ぎだす。


「君は、いつも俺に色を見せてくれるんだ。俺がずっと探していたもの、それが君にあった」

「……」


探していたもの、それはきっとナツキさんの言っていた“新しい色”というものだと思う。でもそれを私が持っているなんていうのは、何度言われてもピンとこない。むしろ私には色が無い。自分で探しても見つからないのだ。…でも、もしあるとしたならば、それはきっとーー真っ黒な、孤独な色。思いつくのは黒一色だ。