「じゃ、帰るね。」

 しばらく奏多と話をして、外も暗くなってきから帰ることにした。奏多の家から徒歩2、3分の近所だから送られることなく家路へ着く。




 ーーーーーー「ただいま。」

 そう言って、部屋へ向かう。なんだか、今日は疲れた。テスト最終日だからかな。


 そう思いながらスマホをいじる。今日は2月26日。今日が記念日なんだなぁ、って改めて実感。

 ドキドキしたし、嬉しかった。本当に嬉しかった。だから、奏多のあの表情とキスした後に浮かんだ早瀬の表情が、意味分かんない。  

 おかしかった奏多にたくさんキスされたときは苦いなんて感じなかったのに、付き合って最初のキスは、ちょっと苦い気がした。


 「…明日、学校行きたくないな。」

 早瀬と仲良くしているところを奏多に見られたら奏多を傷付けるし、奏多と付き合っているから早瀬を避けたら早瀬を傷付けるし。


 避けられる辛さは分かるから、やりたくないな。


 ヴー、ヴー、


 あれこれ考えていると、震えるスマートフォン。電話だ。


 相手の名前を見て、さらに戸惑う。彼は超能力でも持っているのかと疑いたくなるくらい、あたしの憂いに敏感だ。



 「早瀬だ、どうしよう。」

 画面に表示されている【早瀬朔】の文字が、あたしの動揺を誘う。出るべき?出ないべき?


 ーーーーあぁ、もう!!