俺もちゃんと指回るかな…

やべえ、なんか指先が冷たくなってきたぞ!?

いっつもこうなんだよな。

中学の時のバドの試合だって、直前になって腹が痛くなったり、手が震えたり。

つまりはビビリなんだよな。

情けない。

「瞬君…」

ベースの上に乗せていた手に、急に小さな手が重なった。

その手は桃先輩の手で。

「大丈夫、瞬君、頑張ったんだもん!だから、楽しんで演奏しよう?」

「っ…はい!」


本番前の桃先輩の言葉のおかげか、なんとかミスなく演奏出来た。

やっぱり好きだなぁ。

この気持ち、もう止まんないよ。

先輩とアンプを運びながら、その横顔を見つめる。

桃先輩、好きです。

俺、本当に先輩が好きなんです。

口に出さなきゃ伝わるわけないのに。

「もーも!」

アンプを運び終えて、集合場所に戻ろうと歩いていると、後ろから誰かが桃先輩の肩をたたいた。

「あっ、こうちゃん!見に来てくれたんだ!」