「瞬君!」

私がつい少し大きな声で名前を呼ぶと、突然ガバリと起き上がった。

「はい!」

その大きな返事に思わず笑ってしまう。

「あ、れ?桃先輩!?」

「瞬君、早いね。」

「すみません!俺、寝ちゃってて…下手だから早く来て練習しようと思ったんですけど…」

それにしても早いなぁ。

点呼の時間まであと二十分以上あるのに。

「私もよく授業中とかうとうとしちゃうよ。」

特に数学や物理など、理数系の時間は睡魔との戦い。

「わかります!俺、英語が苦手だから英文聞いてたら子守唄に聞こえちゃって…数学とかはやる気出るんですけどね。」

へえ。

瞬君って理系なんだ!

私はバリバリの文系だから尊敬しちゃうな。

「運指表、わかりにくかったら言ってね。」

「はい!大丈夫です!」

瞬君は毎日運指表を家に持って帰っているみたい。

本当に練習熱心。

「おっ、二人共早いねー!」

ガラガラと扉が開き、部長が入ってきた。