弦が結構太いから、指は関節ごとにきれて血が滲むし、何より大きいからそれだけで結構な体力を消耗する。

そう思うと、桃先輩はあんなに小さな手と華奢な体でこんなに大きな楽器をよく弾きこなせるなって尊敬する。

桃先輩のベースはその名前にふさわしく、桃色の可愛らしいベース。

初心者の俺が言うのもあれだけど、音がすごく安定していて、きれいだ。

「兄ちゃん、吹奏楽部入ったんだっけ…なんで急に音楽?ピアノやってた時もう二度としないって言ってたじゃん。」

凛が眠そうに大あくびをしながら面倒くさそうにいった。

たしかに俺は小学六年までピアノをやっていて。

ピアノを弾くのは好きだった。

上手くなれば褒めてもらえるし、何より演奏するのが楽しくて、いろんな曲に挑戦した。

だけどある日、レッスンに行くと同級生の女子に会った。

そう、同じピアノ教室に通っていたんだ。

しかもその子は俺が密かに気になっていた子で。