ステージ上をあたしはゆっくり、だけど優雅に色香を漂わせながら練習したとおりに歩く。



観客の視線があたしに集まり、中には息を飲む音さえも聞こえた。


誰もが微動もしない中を、独り鈴の音に合わせて進む。



しかし突然鈴の音が消え、体が宙に浮く感覚。



鈴の音が消えたのは歓声が音を消してしまったからで


宙に浮く感覚がしたのはあたしが抱き抱えられたから。




あたしを抱き抱えた人は、どこか不満げな苛立った表情をしている陽先輩だった。