眠れなかった。
五時頃にのぼる夏の太陽を見ながら、奈々子はぼんやりとしていた。
土曜日、何事もないように、結城は診療所に来た。
いつも通りに診療所のみんなや母親たちに笑顔を見せ、お辞儀をして帰っていった。
手元のメールがなければ、誘われたのは夢を見たとか、気のせいとか、そんな風にも思ったかもしれない。
午前中の待ち合わせだ。
あまり時間はない。
何を着ていったらいいんだろう。
あんまりおしゃれをしていって、気合いが入っていると思われるのは恥ずかしいし、でもみすぼらしい格好で結城の隣に並ぶのは、更に恥ずかしい。
「どうしよう」
奈々子はベッドの上でごろごろと転がった。
「せめて夜パックでもすればよかった。あ、今からでも間に合うかな」
奈々子は起き上がって、冷蔵庫に入れていたパックを取り出した。
でも手にとってから、はしゃいでいる自分が恥ずかしくなって、また冷蔵庫に戻した。
「ああ、本当にどうして約束しちゃったんだろう」
奈々子は再びベッドに転がった。