スポットライトがあたると、典子はますます美しかった。
歓びで顔が上気している。


典子は立ち上がり
「みんなありがとう」
と言った。

「おめでとう。素敵な旦那様、見つけたね」
みんなが口々に言った。

「こちら、高明さん。これからもよろしくね」
典子は完璧な仕草で、新郎を紹介した。

「わああ、かっこいい」
誰かが言った。

高明は
「ありがとう」
とはにかんだ笑顔で返した。


高明は確かに整った顔をしていた。
どちらかというとスポーツマンタイプのすっきりした輪郭に、鍛えられた身体。
適度に日焼けをして、笑うと白い歯が光る。
クラスに必ず一人はいるだろう、という男性だ。
奈々子は高明を確かにかっこいいと思ったが、どうしても結城と比べてしまう。


あの顔立ち、雰囲気。
クラスには絶対いない。
学校全体にさえいない。

日本中を探しても、おそらくあの人しかいない、
そう思わせるような特別な存在。


違うグループが新郎新婦に挨拶をしようと後ろで待機しているため、奈々子たちは早々に元の場所に帰って来た。


音楽はクラシックに変わっている。


奈々子はワインを空けて、新しいグラスをもらう。
気持ちよく酔っている状態だ。
明日は休みだし、一日ごろごろしてればいい。
奈々子はそう思うと、新しいグラスから大きく一口飲んだ。


そこで
「すみません」
と声をかけられた。

「はい?」
奈々子は振り向いた。

ボーイが
「戸田奈々子様ですか?」
と訊ねる。

「はい」
奈々子は頷く。

「玄関に、お待ちの方がいらっしゃるのですが」

「え?」
奈々子は首を傾げた。

「どうぞこちらへ」
ボーイは奈々子を促し、エントランスへ連れて行く。


奈々子は首を傾げながら、グラスを置いてついていった。

理沙も
「どうしたの?」
というような顔をしている。

奈々子は首を振って
「わからない」
と伝えた。