記帳を終え、ホールに入る。
広いホールだった。
飴色の床に、きらびやかなシャンデリア。
左サイドに長いテーブルがあり、その上に暖かな料理が並んでいた。
ホールの入り口で、ボーイから赤ワインをもらう。
ふわっと甘い香りがした。
突き当たりには、新郎新婦が座るステージ。
真っ白な花がたくさん飾られている。
その上にはスライドショー用の白いスクリーン。
右サイドは一面ガラス扉で、その外には素敵な庭。
夜のライトアップが美しかった。
奈々子は理沙とともに、専門学校時代の友人達が集まる場所へ合流した。
皆、会わなかった時間を話し合う。
社会に出ると、あんなにも親しく毎日を過ごしていたのに、めっきり疎遠になる。
不思議だ。
「奈々子、まだ同じところに勤めてるの?」
佳子が言った。
「うん、そう。居心地いいの」
「でも女ばっかりだったじゃない?」
「そうだよ」
「出会いは?」
「男性との?」
「もちろんよ」
「ないに、きまってるでしょ」
奈々子は笑いながら、赤ワインを口にした。
「大学病院はいいよ。男の人、いっぱいいる」
佳子が胸をはった。
「付き合ってる人いるの?」
「いない」
「じゃあ、駄目じゃない」
佳子は皆からつっこまれた。
「いやいや、でも、選べるってことよ」
佳子はおどけて言った。
「次は、誰が結婚する?」
誰かが言う。
「結婚っていうと、ハードルが高いな」
理沙が顔をしかめた。
「理沙はじゃあ、付き合ってる人いるのね」
「まあ、一応」
「誰よ? 写真見せてよ」
みんながよってたかって理沙に詰め寄る。
「見せるほどじゃあ、ないから」
理沙が顔を赤らめながら、それでもまんざらでもなさそうに、スマホを取り出した。
「わあ、優しそうな人。どこで知り合ったの?」
奈々子が訊ねた。
「職場。レントゲン技師なの」
「おお」
皆から、歓声があがる。