窓の外を見ると、明るくなり始めている。


「長居させてもらいました。そろそろ失礼します」
結城が立ち上がる。

「あ、はい」
奈々子も慌てて立ち上がった。

「傘、持っていらっしゃいますか?」

「車なんです。そこのパーキングに止めさせてもらってます」
結城はそう言ってから、奈々子の姿をみる。

「戸田さん傘は?」

「あ、置き傘があります」
奈々子は答えた。

結城は窓から外をのぞくように見ると
「駅まで、よければお送りしましょうか」
と言った。

「その、素敵なサンダル。雨だと台無しになってしまうから」

「あ、あの……」
奈々子は舞い上がるような気持ちと、倒れるような緊張感とで、頬が紅潮するのがわかった。

「まだ、お仕事ありますか?」

「いえ」

「じゃあ、どうぞ。社用車なんで、後ろにはたくさん荷物が載せてあるし、かっこいい車ではないですけど」
結城はそういって笑った。

「ありがとうございます。じゃあ、戸締まりしてきます」
奈々子はそういうと、急いで支度をした。